防犯対策(4)
実態調査
- 地域セキュリディ剔出に密接に関わり定量的な評価が必須となる夜間照度や交通量等は、現場での測定調査が必要となる。調査に際し、調査地点・調査方法・配置人員・調査時間等の実施詳細を策定するには、専門的な知識・経験を必要とする場合もあり、自治体の担当部局・警察・ 防犯関係団体等からの支援や助言を受けることが望ましい。
- ■照度調査
- 防犯対策の基本の一つである「光」、すなわち防犯の観点より必要とされる摺低限の照度を夜間は常時確保しておく必要がある。最低限の照度が保たれているかの確認は夜間の実測による。測定にあたり、場所によっては商店街、マンション敷地・廊下、事務所等の照明が深夜 に消えることで、同じ夜間であっても照度が大幅に悪化するケースがあることも考慮しなければならない。「安全・安心まちづくり要綱」では道路において必要とされる照度を以下のように規定している。
- 防犯灯に用いられるランプの種類は、血管型蛍光ランプ・水銀ランプ・高圧ナトリウムランプ等多種多様であり、演色性(色の見え方)・消費電力・光の広がり等の物理特性はもとより価格も異なることから、設置場所の環境・状況に応じた適切なランプの選択が肝要となる。現在防犯灯に使われているランプでは雀エネの面からインバータ式蛍光ランプが増えているが、今後の傾向として。より省エネ性に優れ環境への負荷が少なく、更に飛躍的な長寿命で維持・管理に手間がかからない、LED防犯灯の魚連な普及が見込まれる。しかしLEDは蛍光ランプ等の拡敵性のある光源に較べ指向性が強いため、設置間隔の長いまたは道幅が広い道路の防犯灯としては、本来照度が必要とされる道路端等に光が届かないことが懸念される。LED防犯灯では多くの場合、拡散に適したLED基盤の配重一配列、レンズ状カバーによる適切な光の拡散等により、LEDが持つ問題の解決を図っている。懸かる防犯灯のLED化への流れを踏まえ、LED防犯灯用の照度基準としてクラス[+B]が新たに設けられた。これは道路端の明るさについてもクラス『B』並みを確保することを規定したものである。
- 「安全・安心まちづくり推進要綱」では、全ての場所に求められる明るさは「4m先の人の行動を視認できる」水平面照度で3ルクス以上、即ちクラス日以上の確保が望ましいとしている。因みに、公衆便所は「人の顔、行動を明確に識別できる程度以上」の50ルクス以上。駐車場の車路 は事故防止のため10ルクス以上の確保が求められている。この基準に沿い、住民が危険と感じ且つ照度が3ルクス以下の道路があれば、照明設置の新設・改善等の対策を講することが望ましい。さりとて、3ルクスの基準を満たしていない道路は多くあり、「改善措置を実施すべき」と評価しても実際の実施にあたっては費用を考慮し、効果が高 いところから実施する、という場面が出てくる。このことから、評価にあたっては優先度を付す必要がある。
- ■道路、公園、駐車・駐輪場及ぴ公衆便所に係る防犯基準
- 1.道路
- 原則として、ガードレール、樹木等により歩道と車道とが分離されたものであること。
- 防犯灯、街路灯等により、夜間において人の行動を視認できる程度の照度が確保されていること等
- 2.公園
- 植栽、いけがき、草むら、ぶらんこ等の遊戯施設等につき、周囲の道路、住居等からの見通しを確保するための措置がとられていること。
- 当該公園の周辺に、交番・駐在所、子ども110番の家等が、又は当該公園に防犯ベルが設置されていること等
- 3.駐車・駐輪場
- 管理者が常駐若しくは巡回し、管理者がモニターするカメラその他の防犯設備が設置され、又は周囲から見通しが確保された構造を有すること。
- 駐車の用に供する部分の床面において2ルクス以上、車路の路面において10ルクス以上の照度がそれぞれ確保されていること等
- ここに日本防犯設備協会が実施した、照度改善が住民に与える安心感の変化に関する実証実験の結果がある。
実験は地域住民のアンケート調査結果で"暗くて通りたくないとされていた延長約200mの道路で実施された。 過去の管理交換等の管理記録無し、ランプの老朽化、グローブに虫の死骸・ホコリが付着、防犯灯周囲の植栽が光を覆う、等々の状態で殆どの地点で3ルクスの基準を満たしていなかった。
これらに対し、消費曙力が従来品比的3/4の新ランプに交換、グローブの清掃、植栽の剪定を行う事で、大幅な照度の改善且つ消費電力の削減が達成された。今後予想される長寿命・省電力が顕著なLED防犯灯の急速な普及は、防犯灯の維持管理の手間と費用の大幅な削減となることにより、地域セキュリティヘの貢献は極めて大きなものとなることが期待される。 - ■交通機関調査
交通量調査では、対象を車輛のみに限定せず自転車・人を含め、時間帯別に把握することが必要である。重点的に胴査する区域・地点の決定には、警察の拘つ過去の事故発生・違反摘発の記録が参考となる。 交通事故や交通犯罪に巻き込まれ易いのは、俊敏な動きが苦手で注意力が散漫となる傾向にある児童・学童・高齢者等の体力的弱者である。学校・病院等の周辺の調査では、周辺の見通し、不測の事故を招くことが懸念される違法駐車、転倒を招きかねない歩道の段差や障害物の有無等々、周辺環境の問題点の抽出も肝要となる。 - ■車道と歩道か分離されていない通学路
学校では周辺のみならす通学路を含めた調査が必要となる。また、登校時は比較的短時間での人数もまとまっての動きであり、更には交通指導ボランティアによる見守りのケースがあるのに比べ、下校時は少人数で三々五々動作も緩慢で長時間、ボランティアの見守りも比較的少なくなる傾向から下校時間帯での調査は極めて重要である。 - 駐車場では車の出入りに巻き込まれる事故の発生が懸念される。また、車の盗難・車上荒らし等の車関連の犯罪のみならず暴行・傷害・恐喝等を含め。全刑法犯の約30%が駐車(輪)場で発生している点に留意し、周辺からの見通し及び出入りの際の安全管理情況等についての調査が必要となる。
- 調査結果を踏まえ現状の改善が必要とされる区域・地点への適切な対策が必要とされるが、交通問題に関わる道路行政は多岐に亘ることより、担当主務部門が行政内部・警察で細分化されており、対応に時間がかかることが懸念される。迅速な対処を可能とする行政・警察等関係部眉間での体制の整備が求められる。
- ■調査項目
○車輌通行量
交通量が多いことで危険に巻き込まれる可能性は増えるが、車歩道分離・車線数・歩道幅・見通しの良し悪し、等々の要因で危険度は異なることから、調査では数的な交通量に交通環境全体の評価を加味した相対交通量の考え方が必要となる。朝夕の通勤通学時には駅周辺の交通量は増加するであろうが、バス・タクシー等公共交通車輛の比率が多くなることより、一般道に較べ相対交通量は少ないとの評価となろう。幹線道路の渋滞を避ける抜け道として狭い道路に侵入・通過する車輛は、多くの場合地域の事情に疎い地域外の車輛であり相対交通量は多いと貝なす。商業施設・行政施設等での交通量は、曜日・鴎間帯により大きく変化するが、誘導員配置の有無により危険度は異なる。 - ○自転車・人通行量
自転車の歩道通行の割合、歩道通行の理由、車道通行を避ける理由等々、数量的な調査に加え現象の背景の調査も必要である。 自転車・人の通行量は「人の目」であり、通行量が多いことは、防犯の観点からは望ましい。自転車専用レーン・自転車通行可能歩道の拡充、安心して歩ける歩道の整備は、地域防犯には極めて有効となる。 - ○車種・ナンバープレート
公共交通車輌・一般車輛、自家用章一営業車、小中型車・ 大型車の時間帯別の通行量・流れの方向を把握することで、地域の交通事情の大粋が把握できる。大型車輛の通行が多い交差点の曲がり角では格別の対策が必要となる。幹線道路から外れた狭い道路を通過する車輛のナンバープレートの登録地を調査することで、主に地域住民が利用している道路か、地域外の車輛が渋滞を避ける等の理由で一同的に侵入しているのかが判断できる。 - ○交通規則の遵守
最高速度・一時停止等の遵守状況の調査及び違反車輛が多い堰合には、その理由の考察も必要である。子ども・高齢者が事故・犯罪に巻き込まれるのを避けるためにも、地域全体での交通規則遵守状況の調査は必須である。 - ○横断歩道
調査事項は、歩行者用青信号の作動時間は高齢者にも適切な長さが確保されているか、青信号を音でも知らせているか、点字ブロックの敷設・バリアフリー化は適切か等々。 また、横断歩道の位置は適切か、横断歩道を通らす道路を渡る場所とその理由の調査も肝要である。幹線道路に面した公園の入り□に横断歩道が無い場合等は、子どもの危険な道路横断が起こり易い。 - ■方策
○歩道の確保
段差・植栽等の物理的な手段による車道・歩道の分離は、交通事故防止のみならず、ひったくり防止にも効果的である。しかし通学路では、ガードレール等のより強固構造物による車道・歩道の分離が必要である。塗料による通学路における歩道の表示は、事故・犯罪防止には直接的な効果は無いと竟なすべきである。 - ○横断歩道の新設・移動
学童を持つ家族が多数入居する大型新設マンションの前に横断歩道か無い等は、地域開発と道路行政の連携不足に起因するものであろう。横断歩道の設置には、一定の最低間隔の確保が必要となるが、地域開発による環境変化を踏まえた柔軟な設置場所の見直しが、特に新興開発地域では、肝要となる。幹線道路に面し多くの住民が利用する公園の入り□、交通量の多い通学路等にある横断歩道では、押しボタン式歩行者専用信号の設置が望ましい。車道幅・車道分離帯の有無如何ではあるが、体の不自由な人にとっても道路を渡りきるのに十分な青信号点灯時間の確保か必要である。 - ○車輌交通規則
道幅が狭く物理的な手段での歩道の確保が困難、地域の事情に疎い地域外の車輛が渋滞回避を目的に多数通過、交通規則を守らない車輪が多い、等々の通学路では、通行禁止時間帯の設定あるいは一方通行による事故・犯罪リスクの低減策の検討も必要であろう。 - 速度違反に対しては、ハンプ・狭さくの設置等物理的手段による減速の強制が考えられる。外国では、通行車輛の速度を表示し、速度違反の場合には減速を促す自動速度警告システムを学校周辺に設置する例がある。
- 4.危険箇所マップの作成
- 「安全・安心まちづくり」への取り組みは、小学校の学区程度の地域単位で行われるケースが多い。現在多くの小学校では安全教育の一環として、学童が通学路を中心に学区全体を歩きながら、学童の視点で洗い出した危険箇所を地図上に表示、これに交番や「子ども110番のいえ」等を加えた「危険箇所マップ」を作成し、学区の安全確保への指導を行っている。「危険箇所マップ」 に防犯ボランティア・住民アンケート結果等の大人の視線も加味し、更には、防災の観点からの危険箇所・災害時の避難経路・避難場所等を加えた「安全・安心マップ」 とも言える資料を地域住民全体で作成し共有することが大いに望まれる。 自治体が作成する河川氾濫・地盤液状化・津波等々の危険地域を示すハザードマップも参考となる。防犯・防災の観点からの危険箇所洗い出しは、地域環境の変化を考慮し、定期的な見直しの作業が必要とされる。
- 5.防犯対策の具体化
- 住民アンケートや実地調査の結果洗い出される危険箇所の改善には、行政・警察でなければ出来ない対策が多々ある。例えば、老若男女に終日様々な用途で利用される自治体が管理する総合公園。幼児の安全のためのポール遊び禁止等利用規定の策定、遊具をはじめ器物・設備の点検・維持・管理、危険回避のための植栽・動繊の変更等々は行政の管轄。不審者の出没、器物破損、迷惑行為等の牽制・取り締まりは警察。住民に出来るのは、自主巡回パトロール、行政からの委嘱による清掃・樹木の剪定・花壇の管理等々、民間団体であるが故に活動範囲には限界が生じる。これは公園の例であるが、地域セキュリティの確保には、対策が必要とされる場所及び必要とされる対策により、行政・警察・住民が緊密な連携の下、民間団体へ依頼する活動範囲を定めることを含め、迅速な対応を可能とする行政・警察側での体制の整備が肝要となる。
防犯対策具体化の事例
- 1.住宅の侵入盗対策-行政・警察が主導
- 住宅を対象とした侵入犯罪は罪種別に、侵入窃盗・住居侵入・侵入強盗に分類されるが、約90%を占めるのが侵入窃盗である。侵入窃盗の住宅形態別内訳は、戸建住宅が約60%、共同住宅が約40%。侵入盗が侵入をあきらめる時間では、70%が5分以内、90%が10分以内に侵入できなければ犯行をあきらめるとのデータがある。
- 犯罪者の心理分析データでは侵入をあきらめた理由で最も多いのは「近所の人にジロジロ見られた」で約60%、次いで「ドアや窓に補助錠が付いていた」「犬がいた」「機械防犯対策には警備システムが付いていた」で各々約30%程度。互いに声を掛け合い近所付き合いか活発なコミュニティが防犯対策として如何に有効であるかを示す数字である。
- ■基本警戒線(セキュリティゾーン)
住宅の防犯対策には「基本警戒線(セキュリディソーン)」の考え方がある。戸建住宅では、敷地外周部を第一警戒線、次いで建築物に向かい側に第二・第三警戒線、案内にある金庫などの重要物を第四警戒線と定める。共同住宅の場合、敷地外周部を第一警戒線、建物外周部を第二警戒線、身の安全と財産を守る占有部は第三警戒線となる。戸建住宅の場合、建物外周部の第二警戒線がこれに相当する。身の安全と財産を守るべき最も重要な警戒線のレベルが共同住宅に較ベー段階外側の戸建住宅にあっては、活発なコミュニティが第一警戒線の外側の地域全体を守る極めて重要且つ効果的な「予備警戒線」として機能するといえよう。 国としての住宅の防犯対策への取り組みとしては、犯罪対策閣僚会議が示した「安全・安心まちづくり全国展開プラン」における「犯罪に強い住宅街の整備」として以下の規定がある。(抜粋) -
- 防犯性能の高い建物部品(CP部品)
官民が合同で開発・普及を図っている防犯性能の高い建物部品(錠、ドア、窓、シャッター等)に関し、最新の侵入手口に対応した製品の目録への掲載を更に拡充させる。 - 住宅の購入・注文時における防犯性能の表示
住宅の品質確保の促進等に関する法令に基づく住宅性能表示制度に防犯に関する性能表示事項を新たに追加する。 - 防犯性に優れた共同住宅等に関する認定基準の策定
建物や敷地まで含めた全体の防犯性能に優れた共同住宅等に関する総合的な認定基準を関係団体と協力して策定することにより、防犯性に優れた住宅の普及を促進する。 - 防犯優良マンション認定制度の全国展開
一部の都道府県において実施されている「防犯優良マンション認定制度」を全国に展開し、防犯性に優れたマンションの普及を促進する。
- 防犯性能の高い建物部品(CP部品)
- ■防犯性能の高い建物部品(CP部品)
CP(Crime Prevention)部品とは、玄関ドア、錠前、サッシ等の主に廸物の開□部に使用される建物部品で、国士交通雀・警察庁、建物部品関連団体から成る「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」において、進入までに5分以上かかる等の一定の防犯性能基準を満たし、防犯性能の高い建築部品として防犯建物部品目録に掲載された部品をいう。 以下はCP建築部品関連5団体。 - 日本ロック工業会
- 社団法人日本サッシ協会
- 社団法人日本シャッター・ドア協会
- 日本ウィンドウ・フィルム工業会
- 板硝子協会
- ■防犯優良マンション認定制度
「安全一安心まちづくり全国展開プラン」の指針を受け、全国防犯協会連合会・ベターIリビング・日本防犯設備協会の全国公益3法人により、「標準認定基準」が策定され、認定制度は「設計段階」「竣工後」の2段階方式での実施が決定された。 「防犯優良マンション認定制度」は、「標準認定基準」を基に、都道府県毎に定められた条例等の諸事情を踏まえ策定される独自の認定基準に則り、都道府県の防犯関係公益法人が事業主体者として実施・運用されるとしている。 以下は「標準認定基準」に定める防犯対策の必須遵守項目である。 - ◆共用部分
- 共用玄関にはオートロックシステムの玄開扉を設置
- 共用玄関・共用出入り□及びエレベーターホール等、防犯上重要な共用個所は、見通しが確保された位置に配置
- 周辺等からの見通しが確保できない共用個所は、補完処置として防犯カメラを設置
- 共用玄関(内部)、エレベーターかご内、駐車場車路出入□への防犯カメラの設置
- 共用廊下及び共用階段は、乗り越え等による進入が困難な構造
- 塀・椙・垣根等を設置する場合は、周囲の死角の原因及び住戸の窓等への侵入の足場とならないもの
- ◆専用部分
- 住戸の玄関は.防犯建物部品(CP部品)等の扉及び錠の設置
- 住戸の玄開扉は、ドアスコープその他外部の来訪者を確認出来るものを設置
- 住戸内には、住戸玄関の外側との閥で通話が可能な機能等を有するインターホンを設置
- 共用廊下及び侵入の恐れのある階のバルコニー等に面する住戸の窓は、防犯建物部品等のサッシ、ガラス、面桔子等を設置
- 住戸のバルコニーは、縦樋、階段の手摺等を利用した侵入が困難な位置に配置
- ■防犯カメラ画像評価基準
防犯カメラで要件を満たす画角の獲得については、年々目覚ましい技術革新を遂げるカメラ・録画機の性能向上を考慮し柔軟に対応することが肝要である。高機能カメラで獲得された高解像度デジタル画像は高倍率ズーム処理でも鮮明度は維持される。即ち遠くを見通す1台 のカメラで獲得の遠景画像でも、特定部分の細部までが確認出来るようになった。また360度までを見渡す1台の広角レンズで獲得された全体画像から特定部分を切り出し、歪みが全く無い通常カメラで獲得の画像と全く同じ画像に変換できる画像処理技術も開発されている。懸かるハード・ソフト両面で年々急速な進歩を遂げる技術革新は、防犯カメラの必要台数を減らし結果、導入コストを大幅に削減することにつながる可能性を示唆している。より高度な防犯レベルが、容易に手に入るというのが近年の防犯カメラシステムのハード・ソフトに関する世界的な技術動向である。 - 2.学童の安全確保ー地域ボランティアと行政・警察の一体化
- 以下は首都圏の政令指定都市において、防犯システム委員会が自治体の教育一行政一警察の関係部門及び地元防犯ボランティア団体等の協力の下に実施した調査・研究の概要である。 対象地域は多数の通勤・通学客が利用する主要駅に近く、面積約43hr、世帯数約3,500戸、人口約8,500人。 大規模マンション一戸建の住宅地区、複数の病院・学校・幼稚園・保育園、銀行、事務所、量販店、商店街等からなる商業・住宅複合地域。調査・研究は同地域にある公立小学校を対象に実施された。調査・研究の内容詳細は報告書及びタイトル『学童の安全確保のための防犯・防災対策』のDVDとして日本防犯設備協会より刊行されている。
- ■ボランティア活動
- ①登下校時の見守り
- 教育委員会の下に組成された「登録制ボランティア」、学校主導のPTAによる「自主ボランティア」、青パトをほば毎日運行し地域防犯活動を行っている地域自治会連合会の「防犯パトロール隊」、の三者がそれぞれ独自の活動として、登下校時の学量見守りを実施。内「防犯パトロール隊」は、地域全体の危険箇所の常時点検、深夜の青パト巡回等、長年に亘り地域総合防犯活動を展開し犯罪抑止の実効をあげていることから、防犯ボランティア全国大会において模範団体として紹介された組織。「防犯パトロール隊」では学校側から毎月全学年の下校時間予定表の提供を受け、毎日のきめ細かい見守り活動スケジュールを作成。三つのボランンティア組織が存在するが、教育委員会及び学校が各々主導するいずれの組織からも、三つの組織の連携によるより実効ある活動の提案は無く、現状のままではせっかくのボランティア活動が義務的な形骸化したものになることが危惧される旨指摘。
- 【結果】
ボランティア活動の形骸化傾向への警鐘とともに、3組織の連携によるより効果的な活動体制の再構築を提案。これを受け、小学校の防犯担当教師より関係ボランティア絹織に対し、「防犯パトロール隊」を中心とするより効果的な活動体制作りに向けた提案がなされることとなった。 - 【総括】
縦割り組織の下に、数合わ廿とも言えるいわぱ義務的に組織化されたボランティアでは、せっかくの活動であってもその実効には自ずから限界が出てこよう。ボランティア活動であればこそ、その活動を実効あるものにするには、然るべき経験・実績のある指導者及び指導的組織が必要不可欠であり、その経験・実績を十分に生かす受け皿を整えてこそボランティア活動本来の目的が達成されることとなる。 - ②「子ども110番のいえ」
- 通学路に沿って、マンションの管理棟・商店・戸建住宅・大型量販店等が「子ども110番のいえ」として、場所・数共に適切に配置。実際の利用は、仲間同士のケンカ・上級生のイジメで逃げ込んだ等が若干あった程度で、大きな犯罪から逃れるために「子ども110番のいえ」が活用されたケースは皆無の実情。
- 【総括】
「子ども110番のいえ」の趣旨が、地域全体で学童を見守っていることを外部に知らしめ且つ学童へも安心感を与えることからすれば、 - 表に貼るステッカーが小さい、
- 表ドアに貼っているためドアの開いている昼間はステッカーが裏返しとなり表からは見えない、
- 定休日のある理髪店などが指定されている、
- 等々見直しが必要と思われるケースが散見された。こうした現象は犯罪企図者には、地域防犯活動の形骸化を示す指標ともなりかねない。大型住宅の新規開発など、通学児童数の増加及び新たな通学路の設定が見込まれる地域にあっては、変化応じた適切な「子ども110番のいえ」の場所・数の事前の見直しが必要となる。
- 学童が学区内の「子ども110番のいえ」をどの程度知っているかは聞き取り調査を行っておらす不明ではあったが、学童による場所の確認及び「子ども110番のいえ」の人との触れ合う機会をもつためにも、安全教育の一環として『危険箇所マップ』の作成と併せ、新年度毎に現地検証を行う事が望ましい。
- ■通学路
- ①交通
- 学区は周囲が終日極めて交通量の多い片側2車線・3車線の幹線道路に囲まれており、学区内の一般道が抜け道として使用されている状況から、早急な事故・犯罪発生未然防止策の実施が必要と判断。学区域で実施した交通量等の調査結果をもって、通学路における学童を取り巻く危険性を場所毎に具体的に指摘。安全対策として、横断歩道の表示、ガードレール等による歩道の確保、時間指定による侵入禁止、等々での早急なる対処を提起。
- 【結果】
通学路の交差点に新たに横断歩道の表示がなされた。学童を守るという迅速な対策が求められる最優先課題ではあるものの、手続き・費用などの面より、全てを一挙に解決することは難しいのが現実であり、ボランティアによる人的対応の強化が当面の最善策とされた。提起した対策全般については、行政・警察での継続検討課題となった。 - 【総括】
交通量・車種・速度・危険現場の目視、等々の現地調査に基づく客観的且つ具体的な安全対策の提言に対し、いずれの関係者からも異論は皆無であった。「学童の安全確保」という社会として最優先に取り組むべき命題については、従来の縦割り行政の枠を超え、道路行政・警察・教育行政・学校等関係部局が一元化し、地元住民の意見を踏まえた迅速に対応する体制の整備が切に望まれる。 - ②照度
- 通学路の照度は、下校時間を想定した時間帯での実測値が「防犯基準」を満たす水平面照度で3ルクス以まであることが必要最低条件となるが、公園の入り□・空き地へのアクセスなどの地点ではより高い照度の確保が必要。照度不足への対応は防犯灯・街路灯の新設のみならず、古い管球の交換・グローブの清掃・街路灯を覆う植の剪定等、即効性を最優先に比較的安価で対処可能な手段から順次実行することを提案。
- 【結果】
日本防犯設備協会では実証実験として、必要照度を満たしておらす且つ住民アンケート結果で「夜間は通りたくない道」とされた延長約200mの通学路に設置された全8基の街路灯につき、新しい管球への交換及び地元住民の協力による植栽の剪定を実施した。消費電力の少ない省電力タイプの管球を使用したが、植栽剪定とグローブの清掃の効果と相まって通学路の照度は大幅に改善。小学校の防犯担当教師より「明るくなった」と、学童も喜んでいるとの報告を受けた。 - 【総括】
防犯灯・街路灯の管理者は、公地に設置されている場合は自治体、民地は民間となるが、維持・管理については通学路に関する限り定期的な官民一体での対応が望まれる。戸建住宅地の照度が足りない通学路では、門灯・玄関灯の点灯で街路灯の補完とすることを自治会として各戸に要請することも考えられよう。 - ■危険箇所
- 学童の視線により学区内の危険箇所をチェックし、それらを地図上に表した『危険箇所マップ』を安全教育の一環として作成。これに、教師・地域防犯ボランティアなど大人の視線も交え、地域全体の『危険箇所マップ』を作成、地域全体で共有。
- 【総括】
危険箇所は、施設の管理、季節、植栽の手入れ、車・人の流れの変化、等々により絶えず変化するもので頻繁な地域全域の観察が必要である。危険箇所として指摘した施設・物件には、本来ならば地域の安全・安心には率先して範を示すべき行政当局が管理する、廃墟化した公務員住宅、植栽で見通しの悪い公園、犯罪企図者が身を隠し逃走用にも好都合な広場等が含まれた。地元自治会の協力もあり、行政当局による迅速な改善策が講じられた。行政当局が率先して目に見える形での具体的な防犯対策を講することは、地元地域住民の防犯意識啓蒙には最も効果的な方策である。 - ■学校での対策
- ①構内への侵入防止
- 地域住民が自由に出入りでき、地域コミュニティ形成の場となるべき公共空間としての学校の位置付けは、残念ではあるがもはや現実的ではないのが防犯対策面からの今日の実態。正門を含め全ての構内への入口は、監視者がいない場合には常時閉鎖し、無断侵入を禁する表示を掲げ出入規制の実施を原則としなければならない。外来者への対応はカメラ付きドアホンを通じて行い、構内立ち入りを許可する場合のみ電気錠を遠隔開錠。出入□には、常時録画機能付き防犯カメラシステムの導入が必要。
- 【結果】
防犯システム委員会では防犯モデル校化の実証実験として、委員会参加企業の協力により、常時録画機能付き遠隔監視カメラシステム・カメラ付きドアホン・遠隔操作機能付き電気錠等、防犯機器・システムー式を教育委員会に無渦供与、設置した。機器の操作性・システム運用利便性、学童を守るべき立場にある教職員の安心腹等の追跡調査を行った。
機器・システムの機能・性能・操作性の大幅な向上とも相まって機器の運用についての問題を指摘されることもなく極めて好評、実際に正門付近で発生したトラブルの解決にも録画画像が役立つケースもあった。 - ②校舎への侵入防止
- 刺股は教育委員会からの支給品として常備されているが、侵入発生現場の至近な場所にあり且つ頑強な使い慣れた者が使用するのでなければ、いたずらに侵入犯を刺激することにもなりかねず、軽々な判斯での使用は慎むべき。同じく支給品としては催涙スプレー・ネットランチャーなどもあるが、いずれも使い切りの製品であり使用訓練は行われていないのが実情。侵入犯への現場での対策としては、学童をいち早く現場から遠ざけるのが最善策。定期的に行われる火災避難訓練などの防災対策と同様、日頃からいくつかの犯罪発生ケースを想定した避難訓練が望まれる。
- 【総括】
侵入企図者への対策としては、ます構内への侵入を防止すること、次いで校舎・教室へ入れないことがある。防犯システム委員会では、外部から教室への侵入を防ぐ対策となる防犯フィルムを提供、通りに面し外部からの見通しがきく低学年の教室の窓に貼付、学童・教師・保護者より安心血についての意見を聴取した。防犯フィルムの効用として地震の際のガラスの飛散防止効果もあることから、保護者からも高い評価を受けた。防犯避難訓練は、同じく防犯システム委員会が提供の訓練機能付き緊急地震速報受信機を活用し、防災避難訓練の一環として実施。「まずは校舎外に逃げること」の徹底に努めた。 - ③防犯指導
- 学童全員に防犯ブザーを持たせる自治体が増える傾向にあるが、正常に作動しているかを定期的に点検すべきと指摘。
- 【結果】
クラス単位での一斉点検の結果、電池切れ・機器不良で作動しないケースが散見される結果となった。
3.繁華街・商店街の安全対策-地域団体・住民による自主活動への行政・警察の支援
- 繁華街・商店街は不特定多数の人々が集まる場所であり、匿名性が高く、地域への帰肩息識(鎖域性の確保)を持ち難いことより、落書きやゴミの放置等公共空間でのモラルの低下が起こり、犯罪を誘発する環境が生まれ易い。 また、被害対象の人一物共に多数・多様であり、暴行・傷害等の粗暴犯の発生割合も高まる地域である。表通りと裏通りの照度の差、犯罪者が隠れ易く逃走し易い裏通りの迫り等も繁華街・商店街の一般的な特徴である。
- こうした特徴をふまえた防犯対策としては。裏通りを含め地域全体で十分な照度を確保、裏通りへの部外者の立ち入り制御等があるが、墨も有効なのは「監視性の確保」即ち「人の目」である防犯ボランティア・警備員による巡回警備、「機械の目」である防犯カメラの設置であろう。 組織犯罪の温床ともなりかねない歓楽街における防犯対策については、警察主導での組織的な対策が講じられている場合が多い。しかし繁華街・商店街においては、自主防犯活動を行っている地元商業関係団体・住民からの相談・要請を受ける形で、警察が協力・支援を行うのが一般的な状況である。 規模・知名度にもよるが。繁華街・商店街を地元の顔・地域活性化の源との位置付けで、外部からの人々が安心して集える環境整備のため、防犯対策へは助成金を含め地元民間団体への積極的な支援を行っている自治体もある。
- ■防犯カメラの導入について
- 匿名性が高く、多くの人が集う繁華街・商店街では、 防犯カメラ設置による犯罪抑止効果は多くの事例で実証されている。他方、24時間録画機能付き防犯カメラシステムで不特定多数の人物の画像を獲得・保存することについては、個人情報保護の観点より、設置に反対す意見もある。しかし防犯カメラが果たした犯罪抑止・ 犯人逮捕の役割が社会的に認識されるにつれ、防犯カメラの設置は、機器・システムの低価格化とも相まって、近年急速に進んでいる。因みに日本有数の繁華街のケースでは、防犯カメラ設屋後は犯罪発生が大幅に減少、繁 華街に集う人々・地元住民の約90%が設置に賛成とのアンケート調査結果もある。人々が集う地域の顔でもある繁華街・商店街における防犯カメラの導入・運用について、行政・警察による資金面での一層の支援の強化が望まれる。
- ■防犯カメラの管理・運用ガイドライン策定の指標
- 以下は、民間の組織・団体が管理・運用責任者として繁華街・商店街に設置する防犯カメラについて、日本防犯設備協会防犯システム委員会が提案する管理・運用規定を策定するに際しての指標であるが、これらは現在の社会状況を踏まえての指標であり、状況の変化に応じ随時見直されるべきものである。また自治体毎に定める防犯カメうの管理・運用並びに個人情報保護に間する条例・指針・ガイドライン等が在る場合には、それらに則った管理・運用が優先される。尚、防犯カメラとはモニター上に獲得画像を表示するだけではなく、画像を一定期間録画保存する装置を含むシステムをいう。
ここでは項目ごとに明記しておくべき事項を列記、一部その理由等に付き注釈を加えた。 - (目的)
- 犯罪の抑止・防止 2.犯人の検挙による再発防止 3.被害の軽減
- (趣旨)
- 個人情報保護を最優先の管理・孫用
- 防犯を専らの目的とするも、一定の閲覧規制条件下においての事故防止及び防災の副次的な目的での運用も含む
- (定義)
- 繁華街・商店街に設置
- 関係する行政・警察の各部門・機関等及び社会多数の合意の下に、民間の組織・団体等が管理・運用
- (対象)
- 不特定多数の人物を対象
- 個人が識別可能な画偏での動画としてのデータ獲得
- 獲得データの一定期間の録画保存
- (設置者等の責務)
- 設置の目的・趣旨・定義等を広く(行政・警察との連携)
- 個人情報保護法則に基づく規定の遵守
- (設置場所・撮影範囲)
- 目的に沿う必要最小限の設・個所及び撮影範囲
- 撮影範囲は個人情報保護に配慮
- カメラ性能に応じた撮影範囲の設定
- 適切な撮影条件の設定(タイマー・動作検知・モザイク処理等)
- (設置の表示)
- 人目に付きやすい場所
- 管理責任者名を併記
- 「24時間」「録画中」等の表現
- 繁華街・商店街全体が防犯カメラの遠隔監視の対象となっていることを示す表示とすべきで、防犯カメラ設置場所を正確に示す表示は不要。監視対象の地域内のみならす、周辺地域にも防犯カメラが設置されていることを表示することで犯罪企図者の侵入を牽制。
- (憧理責任者等)
- 設置老は管理・連用責任者を定める義務
- データ閲覧権限者は管理・運用責任者及び必要最小限の権限移譲を受けた者に限定
- データから得た情報の漏えいの厳守
- (データの憧理)
- 録画装置は強固な施錠が施された場所に設置
- 場所は原則非公開
- 閲覧権限者以外の立ち入りを原則禁止
- 稼働に適した温度・湿度環境の維持によるデータ逸失の防止
- データのコピー及び外部への持ち出しは原則禁止
- データ保存は1か月を目途
- *犯罪企図者等は事前に下見を行うケースが大半であり、犯罪の抑止・防止及び犯人の検挙の観点からはデータの保存期間は長い方が望ましい。近年は録画媒体の主流となったハードディスクの急速な大容量低価格化が進み、データの長期保存への対応が比較的容易となっている。
- 従来、個人情報保護の観点よりデータの涸えい防止等安全管理面をふまえ保存期間を短く設定した経緯包あろうが、データ管理規定を厳格化することで、犯罪の抑止・防止として防犯カメラの導入の本来の目的からも保存期間は最低でも1か月程度とすることを推奨する。また、犯罪の抑止・防止の観点からは、管理・運用規定としてデータの保存期間を公開することは犯罪企図者を利することにもなりかねないことにも留意し、原則保存期間は非公開とすべきである。 又、録画機器・録画媒体を廃棄する場合は、データ消去作業完了証明を発行する認定処理業者による処分もしくは媒体の破壊・粉砕等の物理的処理
- (データの鰹供)
- 刑事訴訟法等の法令に基づく場合
- 行方不明者の安否確認・災害発生時の被害状況の情報提供等、人の生命・財産の危険を回避するための緊急対策が必要と判断される場合
- 捜査機関より犯罪捜査のため情報提供を求められ、情報提供が将来的に社会的にも又、防犯カメラ設置地域としても安全と利益が害されることが無いと判断される場合
- データの提供に際し、依頼事由・目的・対象事案・依頼者の身元確認・必要範囲(内容・日時)・方法 (閲覧・貸与・コピー)・提供データ内容・データ使用後の処理等、依頼者・提供者双方は文書にて蜜語
- (苦情対応)
- 設置者は苦情処理担当者を定め、管理・運用規定に則った範囲で誠意ある迅速な対応
- 行政の関係部門・機関等との想定事例への対応に関する事前検討
地域セキュリティに配慮した「まちづくり」の事例
- ■福岡市アイランドシティ「照葉のまち」
- 福岡市は博多湾の埋立て地アイランドシティにおいて先進的モデル都市づくりのプロジェクトに取り組んでいる。プロジェクトの基本構想は、国際的競争力のある港湾整備、九州・アジアを視野に入れた新産業の集積、自然と鵠iDした佳環境の整備、安全で利便性の高い都市システムの確立等、産業・人・自然が調和し共存する先進的な都市の創造である。
- アイランドシティは総面積400ヘクタール、「みなとづくりエリア」約210ヘクタールと「まちづくりエリア」約190ヘクタールで構成される。1994年埋立て工事着工、2003年コンテナターミナル供用開始、翌2004年民間企業進出による物流の操業開始。プロジェクトは「みなとづくりエリア」が先行して進められた。 「まちづくりエリア」は新産業一研究開発ゾーン、住宅ソ一ン、複合・交流ゾーン、環境ゾーンで構成される。住宅ゾーンの開発は面積約53ヘクタール、分譲・賃貸マンション、戸建住宅、計6、000戸一人□18、000人規模を想定し進められ、2005年戸建住宅より入居が開始された。
- 福岡市では『新しいまちづくり』の理念として以下の3点を掲げている。
- 人と地球に優しい環境共生のまち
- 子ども・高齢者・障がいを持つ人が健康で生き生きとくらしていけるまち
- 住民自らがまちづくりに参画し活力あるコミュニティを創造するまち
- 懸かる理念に基づき、住宅関連の民間企業体により開発された新しいまちが「照葉のまち」である。
全住戸に「コミュニケーションボックス」と称する機械警備と情報通信の機能を備えた集中制御機を標準装備、玄関・窓等の開口部に設置の侵入検知センサーによる警備システムの運用等、ハード面でも地域全体のセキュリティ確保への対応を行っている。 - 以下は「照葉のまち」において実施されている、安全・ 安心まちづくりへの具体的な取り組みの一例である。
- 1.24時間常駐型タウンセキュリティ(中央部に警備員常駐基地)
- 警備員による地域内の終日不定期巡回警備
- 委託警備への緊急対応
- 登下校時の通学路パトロール
(ホームセキュリティ(「コミュニケーションボックス」の機械警備機能) - 火災・ガス漏れ警報の通報
- 委託警備(警備会社への警報通報)または自主警備
(携帯等への警報通報)を適宜選択 - 外部からの警備用室内センサーの設定・解除遠隔操作
- 双方向通話。生活コンビニ(「コミュニケーションポックス」の生温支援機能)
- 生活トラブJし緊急対応〔水道・電気・ガス等〕
- 生活便利サービス(買い物・家事代行等)
- 駆けつけサービス
- 健康相談〔医師・病院等〕
- 外部からの室内家電の遠隔操作。全員参加型のまちづくり
- 住民は全員「照葉まちづくり協会」への入会の原則
- 文化サークル活動等を通じ全員参加型のコミュニティ形成
- 公園・緑地及び道路植栽の受託管理。交遜利便性の確保(カーショートレントサーピス)
- 30分単位から利用可能な居住者限定の会員制サービス
- 「照葉のまち」での試みは、今後開発される住宅地のセキュリティ創出に大きな示唆を与えるものである。「照葉のまち」は、福岡市が示すまちづくりの理念に基づき民間の開発事業者により具体的な各種方策が策定され、これらに同意し相応の費用負担を承諾した住民のみにより形成された新興居住地域である。
- 1.防犯に対する安心サポート
- しかし、様々な建物・施設が混在し、住んできた期間も異なり「まちづくり」についての事前の約束事が無い人々が住む既存の「まち」では、「照葉のまち」の事例をそのまま適用し地域コミュニティの剔出を図ることは難しい。
- ここに福岡市が行った「照葉のまち」イ主民の意識調査 がある。自分の住むアイランドシティを「美しいと感じる」との回答は97%、福岡市民全体を対象とした結果の62%に較べても非常に高い。要因は「水辺と調和した豊かな緑」「電線類の地中化」等。公民館利用の住民比率は44%と福岡市全体の22%の倍、「安全なまち」との回答は81%と福岡市全体の58%に比較してもかなり高い。実際に単位人□当たりの犯罪発生率は「照葉のまち」では福岡市全体の1/4以下である。
- 興味ある回答は「自分の子どもや孫にも住まわせたいと思うか」の問いに対し、「照葉のまち」では65.5%、これに対し福岡市全体では90.1%と「照葉のまち」を大きく上回る。交通インフラ、学校・病院施設等を含め申し分の無い利便性と生活環境、更には安全・安心確保のための各種サービスを兼ね備える理想的な新しいまちとしては、些か意外な結束とも思える。福岡市の長年に亘り培われた地域としての歴史と、時には親子数代に亘り 育まれる人情味溢れる近所付き合いから生まれるコミュニティの存在も、この数字の差の要因であろう。 既存の「まち」における地域セキュリティの剔出には、新興開発地域では持ち得ない、既に存在する、長年に亘り築き上げられてきた住民の地域への愛着と隣近所との付き合いの輪を最大限に活用することの垂要さを、「照葉のまち」の事例は示唆しているのではなかろうか。
地域セキュリティ創出に果たす情報共有化について
- 『地域セキュリティ創出』とは、防犯のみならず防災・福祉・環境保全・教育等を含め、地域住民が等しく地域情報を共有し、安全・安心に薯らすための生活環境を住民の竪請に応え整えて行くことにある。平常時における具体的な環境改善のための各種施策は、地域の属性・実情等により優先順位及び実施の規模・速さは異なるであろうが、時間を経るに従い現状の改善が着実に達成されるべきものでなければならない。しかし、地域セキュリティで最も重要且つ急務とされるのは、突発的に発生する災害等の異常事態に際し、住民安全・安心を守る最新・最善の対策を常に準備しておくことにある。
- 調査結果によると、深刻な被害を伴う災害発生時において、被災地の住民が身を守るために最も必要なものとして挙げているのは「一刻も早い信頼できる適切な情報」である。根拠の無いうわさ・風評があらぬ混乱を招き、予期せぬ無用の間接被害を生じさせることはよく知られた事実である。また、異常事態発生時の情報入手について、まず全国放送のテレビ次いで地方テレビ、ラジオの順。しかし、時間の経過に伴い、詳細情報の記録媒体としての新聞及びきめ細かな生活に密着した地域情報を伝えるコミュニディラジオヘの依存度が増す。
- コミュニティラジオとは、都道府県単位のエリアを対象とする地方ラジオ局よりも狭い、市程度を対象とするFMラジオ局で現在日本全体で200局以上が存在する。情報配信の対象地域が広いメディアほど、日を迫うごとに被災地の状況を外部に発信することに重点がおかれ、被災地の人々が必要とする情報が滅る傾向となるのは止む無きところである。これとは逆の立場にあるメディアがコミュニティラジオである。
- 『地域セキュリティ創出』を、地域住民が等しく地域情報を共有する環境の整備とりわけ異常事態発生時の生命・財産の保全への対応と定義するのであれば、コミュニティラジオの開局及び既設局への支援は、優先順位の高い行政施策と位置づけられよう。災害発生時のきめ細かな現場情報、警報・注意報の発令、犯罪発生の際の場所と注意喚起の関連情報提供、行方不明者の捜索、生活関連の諸情報等々、信頼に足る公共情報発信源としてのコミュニティラジオ局は自治体の広報活動の支援・補完媒体としての役割を担うものである。自治体が屋外スピーカーを通じ行う警報発令のアナウンスは、時として窓を閉め切った屋内・豪雨時等では聞き取り難いこともあり、また殆どが日本語のみであることから、あらぬ被害を招く恐れも懸念される。コミュニティラジオ局の経営・運営に第三セクター方式を含め自治体が参加し、住民への情報伝達としてコミュニティラジオを活用しているのはこのような背景があってのことである。 大災害発生時には地域の細かな情報を発信するための「臨時災害放送局」の開設が制度として認められているが、『地域セキュリティ創出』の最も有効な手法の一つとして、 平常時においてこそ、コミュニティラジオの開局を検討することは有意義であろう。
- 地域情報共有化の更なる発展の形態として、画像情報も提供する地域密着型のケーブルテレビ及び自治会等が運営する地域ポータルサイトとコミュニティラジオとの連携も考えられよう。携帯電話を含め小電力対応メディア間の提携による地域情報共有化は『地域セキュリティ』の創出に新たな展開を生む可能性を期待させるものである。